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No.27 某電力会社 [short-short]

「社長!、今年の夏の電力ピーク時の、消費量予想ですが、かなり厳しいです。

企業はもちろん、個人のお客様たちにご協力お願いして、かなりの省エネを

徹底しなくてはならない状況かと思います。このデータをご覧ください」

社長室長が、書類の束を片手に発電量予測について力説しはじめた。

「そうは言うがね、去年だって、なんとかなったじゃないか。

今年もなんとか乗り切れると思うんだよ、大げさに言ってもしょうがないだろう」

「しかしですね、浜岡原発は依然として再稼働の見込みが立っていないのですよ。

火力発電をフル稼働させても八月上旬のピーク時は、かなりヤバいです。

ブラックアウトしかねません。早めに対策を出しませんと、高校野球放送時に

停電なんてことになったら、一般市民は黙っちゃあいないと思います。

まして、所轄県内の学校の試合の時に、停電でもされたら、矛先が向くのは

私たち電力会社ですよ。そうなる前に、節電のお願い廻りを、社長!」

「しかし、去年も節電をお願いして廻った時も、ひどい言われ方したじゃないか。

地震だって、津波だって、俺が悪いわけじゃないのに、俺の責任みたいな…。

こっちは頭下げてお願いしているのに、俺のせいみたいにされちゃかなわないよ。

いきたくなんかないよ」

「今年は、去年とは違うんです。異常気象なんです。気象庁でも前年以上の

警戒が必要だといってるんです。どれだけ真夏日が続くのか、わからないんですよ、

今年は」

「首都圏じゃないんだから、心配しなくてもなんとかなるだろう。

それに、一度ぐらいブラックアウトした方が、原発再稼働のコンセンサスだって、

とりやすくなるんじゃないのか?」

「社会インフラを支える団体のトップが、そんな態度でいいのでしょうか。

私には甚だ疑問です。もっと危機感もってください」

「大丈夫だよ、東電さんや関電さんとは、うちは違うんだ。

特に、ウチは夏には強いんだ。応援してくれる人だっていっぱいいるんだ。

なんたって、TUBE電力っていうぐらいだから」


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No.26 エコ発電 [short-short]

「知事、それでは我が県のエネルギーへの取り組みは、自然エネルギーの

活用を積極的に進める、ということで、よろしいのですね?」

「うむ、それで私のイメージアップになるというなら、

やらない訳にはいかんだろう」

○○県知事の二期目の森畑は、秘書に向かってぞんざいに言った。

「で、具体的には何をエネルギーにした発電を推進するんでしょう。

やはり、太陽光ですか、風力ですか。地熱は、我が県には適切な

場所はありませんし、潮汐とか温度差とか、海関係も、地理的にキツイかと」

「そんなものは審議委員会に任せりゃいいんじゃないのか?」

「いいえ、あくまでも言い出しっぺは知事、ということにしなくては

知事の好感度はアップしません。知事が決断してリードしなくて…」

「太陽光発電とかでいいんじゃないのか? 陽が当るただっ広い土地があれば

いいんだろう、適当な場所なんて、いくらでもあんじゃないのか?」

「でもそれ、隣接の県はもうやっていますよ。インパクトないですよ。

知事連会議でまた馬鹿にされますよ」

「それじゃ意味ないな」

「発電量より話題作りが大切です。どうせなら他の県がやらないこと、

やりましょう、知事!」

「風力発電っていいんじゃないの?できそうな場所、ある?」

「我が県には、一年を通じて風が吹くような場所は、ありません」

「他はどうなの?なんかないの?」

「バイオマスという方法も、ありますが、原料になる農業資源がありません」

「なんだ、結局どれもダメじゃん」

「可能性としては、小水力発電装置というのもありますが…」

「なんだ?それは…、詳しく教えてくれよ」

「小さい方の水の力で発電できるエコな発電方法です。出力は小さいですが、

これを県内に千機、二千機単位で設置するというのはどうでしょう。

発電所一件誘致して建設するのよりは、予算的にも遥かに廉価です。

頻繁にメンテナンスというか監視する必要がありますが、

発電所を建築しても維持管理に作業員が大量に必要になりますから、

コスト的には同じようなもんです」

「なるほど、小を合わせて大にするエコエネルギーっていうことだな。

いいじゃんそれ!あとで記者発表の時間があるから、その時にでも

このアイデアをぶち上げよう、きっとニュースになるはずだ。

いいねぇ、君のアイデアは」

知事の言葉に、秘書は満面の笑顔を浮かべた。

そして定例記者会見の席。知事は自信たっぷりの表情で、語った。

「我が県は、次世代の電力確保と安定化に向けて、自然の力を利用した

エネルギーの導入を積極的に推進します。いま考えておりますのが

小水力発電です、その普及に県を挙げて取り組んでいこうと思っております。

初期段階として、県内に千件から二千件の設置を考えています」

即座に記者から質問が出た。

「千から二千カ所というのは、具体的にどの場所が候補になっているとか、

決まっているということでしょうか。流域とか、規模とか」

「そんなのは決まっています。県内の公衆トイレからですよ、小水力って

いっているじゃないですか」

会見場の袖で見守っていた秘書は、やっちまった……と呟いて頭を抱えた。

 

 

 


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