ショートショート 口じゃ、ダメなの… [short-short]
しょうがないじゃない。
見せながら説明できないんだから
しっかり聞いてよ。
だから説明するって。
私のをどうしたらいいか教えるから。
まず、喜ぶというのは知ってるよね。
どうしたら喜ぶのかわかるよね、
大人なんだから。
だから、途中までは普通に喜ぶのでいいの、
そのかんじでいいの。
肝心なのは下の方なの。
喜ぶのよ、わかってる?
でもね、最後は口じゃあだめなの。
途中までは口でいいけど最後は変えるの。
だからぁ、
口は上と下、ふたつあるでしょ。
だから下の方の口をね、
そう、口をやめて、変えるの。
わかった?
く・わ・え・る。
そう、加えるのに加に変えるの。
そう、やっとわかってくれたのね。
その下に門をつけて嘉門、それが名字。
で、名前は洋子、太平洋の洋に子供の子。
はい、嘉門洋子。どう書くか、わかってくれた?
ふぅ。「嘉」の字を言葉だけで説明するのって、
なんかエロいのよね。
ショートショート 従姉妹とセ……… [short-short]
母親と出かけることになった。
俺はもう中学生だし、行きたくもなかったんだけど、
じゃあお年玉要らないのね、などと
母親が言うもんだから、しょうがなく付いていった。
中学生は高校生と違ってバイトもできないから、
お年玉はとっても重要な収入源だしね。
親戚の人たちに挨拶してお年玉貰って、お節食べて
腹いっぱいになったら、もう身の置き場所がない。
おじさんおばさんと会話するのも面倒だし、
かといって独りで何かするというのもアレだ。
大人はお酒飲んでわいわいやってるからいいけど、
子供ってこんなとき、ホント困る。
リビングのテレビでは、大しておもしろくもない
お笑い番組がついていたので、しょうがなく眺めていたら、
それまでキッチンで手伝いしていた同い年の従姉妹の
めぐみが俺のところにやって来て、耳元に小声で囁いた。
「和也くん、ひさしぶりにセ……しようか!」
息がすげぇ擽ってぇし、ぞくぞくっとして、
よく聞こえなかった。
「こっちおいでよ」
誘われるまま、めぐみの部屋に入っていった。
「ねぇねぇ早くぅ~、こっち来て。
だめ、恥ずかしがらないで!
ほら、緊張しないで。
しっかりカラダくっつけてよ。
あ、大きくなってる。和也くんやっぱり男の子なんだ。
すごい!おっきぃよぉ。
え? 固くなってる?
ちょっと動かないで!
これでちゃんとたってる状態?
アタマのところ、ちょっと触るね?
どれぐらいあるかな?
15センチくらい?
へぇ、小学生の頃とは、全然違うんだね。
男の子は中学生になると、そうなの?
だれでもそうなるの?
ねぇ、あたしのも、あとでちゃんとやってくれる?」
めぐみはすっかりハイテンションになって、
俺はもうされるがままのおもちゃ状態だ。
いいかげん耐えられなくなって言った。
「めぐみ、背くらべなんてしなくていいじゃん…」
ショートショート 占い師 [short-short]
冬の夜の、知らない駅での待ち合わせは寒さが身に沁みる。
十代の頃なら、ジャケットさえ着ていれば平気で耐えることが
できたはずのだが、三十路を過ぎてからはどうもいかん。
気がつくとコートのポケットに両手を突っ込み、
肩をすくめている自分に、否応でも年齢を感じてしまう。
落ち合う予定だった友人のケータイへ電話してみると、
20分ほど遅れて来るという。
20分というのは微妙な時間だ。
もし、これが小一時間ということだったならば、
周辺を歩いて居酒屋でも探し、暖簾をくぐってみるという
方法で時間をつぶすことができる。
30分、という時間なら、コーヒーショップに立ち寄るか、
本屋で新刊本や雑誌を眺めることで時間が過ぎるのを待つだろう。
何の気無しに改札から少し離れて駅前の雑踏や
街並みをなどを何気なく眺めていると、電話ボックスの横に
置かれた小さな机と椅子が目に入った。
机には「運勢占い10分 2千円」と書かれた
紙が貼られていた。
占い師といえば、爺さん婆さんというのが相場だろが
三十代、いやもしかしたら二十代にも見えそうな
そこそこの外見の女が座っていた。
(時間つぶしに俺の運勢を占ってみるのも一興か…)
占いなど信じる俺ではないのだが、これから会う友人との
酒のつまみにでもなるだろうと、占って貰うことにした。
「ひとつ、俺の将来を占ってくれるかな」
俺が占い師の前に立つと女はにっこりと笑って、
メモ用紙と鉛筆を俺に差し出し、名前を漢字とひらがなで
ゆっくりと書いてください、といった。
堆 竜夫 あくつたつお
手がかじかんでいたので、下手くそな文字になってしまった。
「これで占って貰えるかな?」
丁寧に、一画ずつ書いたメモ用紙を、俺は占い師に渡した。
占い師は手帳のようなものを取り出し、
俺の名前の横に数字を書いては、手帳を眺め、また数字を書いて、
ということを何回か繰り返した。
「見えましたわ、過去も、未来も」
「ほう、何と出たのかな…」
「仕事の方は、あまりよくありませんね。今はそれなりの地位に
いても周りに貴方をよく思っていない敵が、とても多い。
他人を蹴落としたり陥れてきた、そうじゃありません?」
「はずれてはいないかもね」
俺は苦笑いで答えた。当たらずとも遠からずってヤツだ。
「人生の後半からはトラブルとか、転落の相もでています」
「ほう、せいぜい気をつけなくてはね」
「結婚は、していらっしゃいますね」
「もちろん、ずいぶん前だけど」
「でも、幸せじゃない…幸せは長くは続かないと出ています」
「いや、結構うまくいってるつもりだが」
「経済的には恵まれた人生のようです。お金は流れてきますね、
ご自分の才覚以上に。奥様は資産家のお嬢様、とかではありませんか?」
おや、なぜ判ったのだろう…
確かに、妻は地方都市の素封家に生まれ、今済んでいるマンションは
妻の名義だし、妻の実家からの援助がなければ、子供も私立の学校へ
通わせることはできない状況でもある。
でも何故、名前を書いただけで、他人の経済状況まで
判ってしまうのだろう。
「元気な男の子ですね」
う゛、まだ結婚してることしかいってないのに、
何故息子のことまでわかってしまうのだろう。
あまりの的中率に、驚いていると、占い師は言葉を続けた。
「お子様はお二人。二人とも男の子ですね」
その言葉を聞いて、ようやくふっと俺の気が抜けた。
なんだ、やっぱりあてずっぽうじゃないか。
妻の事は偶然当たっただけか。
そうだろう、占いなんかでそこまで当たるわけがない。
「これからは、二人目のお子様に関する出費が、
とてつもなく増えると占いには出ていますよ」
「ほう。でもウチは中学校にあがったばかりの
男の子がひとりいるだけだ。二人目をつくる予定なんか、
もうとっくにないんだけどな。
やっぱり当たらないんだね、占いって…」
俺は鑑定料を払って、さっさと待ち合わせの駅の改札に戻ろうと、
内ポケットから財布を取り出そうとした。
「あら、子供がひとりだと思っているのは、あなただけかも
知れなくてよ、堆さん」
女占い師は、ポケットから一枚の写真を取り出して
俺に差し出した。
そこには子供の頃の俺にそっくりな、小学生の男の子が
写っていた。
「私とあなたの子供よ。私の顔をよく見て思い出して、堆さん。
もう十年以上も前だけど、何度かはベッドと共にした仲でしょう。
やっと見つけたわ。認知、してくださいね」
女占い師はにっこりと、笑った。
ショートショート ハッキリ言ってよ! [short-short]
何? 突然。どしたの?
わけわかんない!
はっきり言ってよ。
ホント、滑舌悪いんだから。
よく聞こえないの!
ちゃんと言って。
何? どうしたいの?
男でしょ!
大きな声で、はい、もう一度。
口のなか?
口がどうしたのよ。
え? 中に入れる?
何を?
玉?
はぁ?
口の中にぃ……、
玉を、入れろ?……
誰が?
あたしが?
え?そんで、男が下に?
何?それ。意味わかんない?!
アタマ悪いのかって?
悪いのはアンタじゃないの?
え、もう一度いうからよく聞け?
あんた、あたしにケンカ売ってるの?
上等じゃない。
え?
口の中に…、玉を入れて…、国?
その下に?
男とかいて…、
国男…
……あぁ、あんたの名前ね…
ショートショート 女子高生が好きになる?! [short-short]
ケツに軽〜く右足でインステップキック!
「なにボーッと見てんだよ!、
好きな女でもできたか、ん?」
おもむろに右腕でヘッドロックをかまし、
まっちゃんのアタマをぐいぐい締め付けた。
「痛ぇーつーの!」
「何?何?、クラスの女子どもが体育の
後片付けしてるのを脳裏に焼き付けて、
今晩のおかずにでもしようってのかな?
このスケベ野郎!、お目当ては誰だ?」
「ちげーよ!」
まっちゃんはロックから逃れながら、
また校庭へとカラダを向けた。
「じゃあなんだっつんだよ、ってんだよ!」
馴れ馴れしく肩に手をかけながら、晋太郎はいった。
「なんかさ、ウチのクラスの女子どもって、太くね?
デブとはいわないけどさ、全体的に太くね?」
「おう、おまえの目は正しい。
節穴ではないのだなその目は」
「だろ?、雑誌とか、テレビとかで見る
同じ年齢の女って、もっと細いだろ、
スリムだろ? なのに、なんでこいつら
みんな太いんだ?」
「さぁな。おまえが求める明解な回答を
俺は持ち合わせてはいないな。
つまり、こいつらはおまえの恋愛対象
もしくは夜のおかずにはならないって、
いいたいわけだな」
「あったりめーだろ!」
「じゃ、おまえは AKBとか少女時代
とかが、おかずだと?」
「おかずおかずいうなって!」
「じゃあ、言葉を変えよう。つまり
おまえはアイドルというバーチャルな
対象ではなく、リアルなこのクラスの
女子どもと何かをやりたいというのだな?」
「そうじゃねーけど、現実と理想の乖離?
おまえ風にいうと…。それを感じずには
いられなかったということよ」
「隠すなって!照れるなって!、
で、誰が好きなんだよ、いっちゃえよ!」
「だからぁ、好きになってないって!、
なれないって話してんだよ」
「ふん、よし!、じゃあ俺が教えてやろう。
こいつらを恋愛対象にする方法、
好きになる方法をな」
「なんだよそれ」
「おし、黒板来いよ、説明してやる。
まず、女子が細〜くなったところを
イメージして、細長ーく書いてみる。
そして、細く書いた女と子をくっつけて
書いてみる、ほら、『好』になっただろう、
で、大好きになるにはこれを大きく書いて……」
「……アホか、おまえ」







